2016年 04月 05日
別所沼の花見(絵手紙) |
父の花見
毎年この時期、桜の花を見ると思い出す。親父のことだ。
その父が心臓が悪くなって入院していた最後の年、親父が死んだのが平成元年だから、もうかれこれ30年近く前になる。
子供には結構うるさい父親だったが、周りの人には気遣いをよくする人で、とにかく「人に迷惑をかけちゃいけない。」が口癖のような人間だった。
その父が亡くなるその年の春、もうかなり弱っていたころだが、看護婦さんに「桜が見たいから外に連れて行って欲しい。」と頼んだそうだ。「面倒なことを言ったことのない父に初めてそんなことを頼まれた。」とその看護婦さんは後で言っていたが、もちろん彼女は車いすを押して病院の庭を一巡り してくれたそうで、たいそう父は喜んでいたそうだ。
仕事ばかりの頑固なおやじで、情緒らしきものは何もない人だと思っていた父が「桜が見たいと言った」と聞いて驚いた。やはりこれが最後の花見だと思ったのだろう。
毎年桜の花を見ると、「父の花見」のことを思い出す。
by hana-chans
| 2016-04-05 19:01